18切符の旅 3日目

本日も見事晴れ。いつ台風とぶつかるんだろうと思いながら、まだぶつかってない。運がいい。

何度寝しただろうか。まだ友達を寝てる友達を起こすのは悪いから、と思いながらふと気がついたら9:30だった。きっとお互いに別々のタイミングで起こさないようにしていたような気がする。チェックアウトは10:00。慌ててフロントに10:30に変更できないか電話で頼み、隣の部屋の清掃の音を聞きながら急いで準備をする。昨夜とは違う担当の受付の方に挨拶をして、ホテルを出た。

はじめに尾鷲観光物産協会という施設へ向かう。そこで荷物を預かってもらえるらしい。駅前にある商店街の通りには、昨夜、輪郭の欠けた星型のライトがあるなと思っていたけれど、太陽の下で見るとそれらは流れ星だということが判明した。思っていたよりも欠けていた。ホテルから15分くらいじっとりと汗をかきながら歩く。尾鷲物産協会に着くと、丁度他のお客さんのお見送りをしていたおばさまがどうしたの〜って明るく声をかけてくださった。熊野古道に行く旨を伝えると、中へ迎えてくれた。中には職員の方が3人いた。熊野古道の入り口へ行くバスの時刻を調べると、丁度出発したところだと分かった。すると職員の方が、「じゃあ送っていきますよ」と。え、えええ?!?と、思わず二人で顔を合わせる。その大きすぎる優しさと距離の近さへの驚きだったのだと思う。他の観光物産協会がどんなか分からないけれど、近所の人や友達の車にも久しく乗っていない私にとっては驚きが大きかった。帽子とめはり寿司を購入し、入り口へ向かう。車の中では、熊野古道は涼しくて歩くと少し体が火照ってくる春になる前くらいの時期が混むということ、尾鷲が潮干狩りの穴場スポットでもあることなんかを話した。途中にはものすごく大きなダイソーや、スーパーがあった。商業施設が駅前じゃなくて、駅前から少し離れたところにできるタイプの街なんだ。みんな駅使わないのかな。

熊野古道の馬越峠の入り口の手前の休憩所に到着。最後の最後、入り口まで丁寧に教えていただき、もう感謝しかない。熊野古道へ入る前に、めはり寿司と一緒に買った他のお寿司を朝ごはん代わりに口に入れる。日焼け止めを塗り直して飲み物を買い、入り口へ向かった。尾鷲観光物産協会の方が貸してくださったタオルを農家のおばさまとかバイクの人みたいに目を避けて顔に巻いたら、吸った空気が全て柔軟剤の香りになってしまったので外した。前日の夜の雨で濡れた石は、ざらっとしながらもツヤのあり、サイや象の肌のように見えた。もしかしたら友達も同じことを思ってるかもしれないと思い思い切ってそれを友達に伝えたら、なんと共感してもらえた。この時なんか嬉しくて。一人じゃなくて誰かといる楽しさって、こういうことなのかな。

季節は夏。熊野古道の森は黄緑でも緑でもなく、青緑。水辺のせいか下からの風が涼しくて気持ちい。足元には時々キノコが生えている。一面に広がる落ち葉は綺麗だけど、一面に広がるキノコにはおびただしいという言葉が似合ってしまう不気味さがある。なんでだろう。どの国の、文化の人もそうなのかな。360度から聞こえてくるセミの音は、森をより立体的に感じさせてくれる。大体の場所で水の音が聞こえる。時々川から離れ音がほとんどしない場所に来ると、突然周りに誰もいなくなったかのように静かな空間になる。歩き進めてまた水の音が聞こえてくると、なんだか安心する。広い森に一人じゃないと感じさせてくれるのかな。前に聞いた無音の中に45分いると人は発狂してしまうという話を思い出した。

すれ違った人の中には、本気で山を歩く格好をしたおじさま方から、可愛い服を着た若い観光客、熊よけの鈴をつけてビーサンで登る慣れた人までいろんな人がいた。私たちは中間くらい。途中滑ったり、蜂に驚いてダッシュしたりしながら、無事に下山できた。まっすぐ歩き観光物産協会へ戻る。この時まだ今日泊まる宿を決めていなかった。「これからどこに行くの?」「兵庫らへんです〜」なんて会話をしながらやっと泊まる宿を予約し、最後にアメちゃんをもらい、溢れるお礼を一旦言葉で伝えてその観光物産協会を後にした。

 

尾鷲駅から大阪駅へ向かう。あっという間に日が沈み、気付いたら外は暗くなっていた。高速道路の街灯は赤。確か白よりも赤の方が眩しくない、明るく感じないんだよね。だからかな。東海道本線から関西本線?に変わったら、駅の看板が新しくなった。東海道本線の駅看板の方がレトロっぽくて可愛かった。なぜかレトロなフォントの方が可愛いと思う率が高い気がする。その時間の乗客のほとんどは男の人だった。名古屋あたりで18切符を持って一人で乗っている女性や、松阪で同い年くらいの女子三人組に会ったが、数えられてしまうほど少ない。あ、でも通勤時間も電車の中には男の人の方が多いか。なんだろう。女の人はどこにいるんだろう。

あるところまで来ると乗降する人はいなくなってくる。車両にいるメンバーは30分前と同じ。自分の席の反対側の端っこや、向かい側の席など、7人がけの席に2, 3人くらいずつ人が座っている。各々時刻表を眺めたりスマホをいじったりしている。静かだ。きっとみんな青春18切符とか電車好きとか共通点があるって気がついてるはず、なのに静かで。お互いに言わなくても分かっているような、それぞれこの空気を楽しんでるような、でもどこかお互い無視してるような。そんな感じがした。朝の通勤列車で誰も話さないのとは違う空気。振り返ればここと同じように自ら口を開く人はいないが、ここにある静けさや温かさは、ない。もしも「青春18切符の旅ですよね?私たちもなんです!」なんて話しかけたら、みんなで一緒に話すことになったら、どんな風になるんだろう。なんて想像しながら、結局話しかけられないまま、電車はゆっくりと進んでいった。あ、もしかしたら今分岐点だったかも。

静けさの中、途中で高校生の男女が乗ってきた。会話の有無に関係なく存在として彼らはあの電車の中では異質で、でもなんとなく空気に別の温かさが加わったような気がした。彼らはいくつか後の駅で降り、再び私達だけの車内に戻った。たしか京都の九条駅で、一気に人が入ってきた。多分飲み会帰りでこれから家に帰る人だ。家とは別の場所へ向かう私たちとは明らかに違う。電車ごと誰かの生活の中に入るような。新幹線で街から街へ移動するのとはまたちがう。空間が変わる瞬間だった。

 

京橋駅に到着。人の多さと街の明るさに驚くことを初めて体験した気がする。ホテルに着いてコードブルーを見ながら洗濯機で服を洗う。友達と一緒にテレビを見るのってなんか新鮮。一人暮らしの人の方がテレビとかPCで映画とか見る率が高い気がする。一人でいるとき音がないと寂しいよね。乾燥機に服を移す。だけど時間が経っても経っても乾かない。3往復ぐらいした。熊野古道できっと体も疲れてるから早く寝ようね、なんて言ってたのに結局深夜になってしまった。でも楽しいから、それでいいの。