教育実習

 

教育実習に行った。

実習先は母校の高校。
生徒だったときよりも一時間早く起きて、スーツを着て、あのバスに乗る。
数年前と同じ校舎で、同じ景色を見ているはずなのに、どれも全く別のものに見えた。

 

初めて担当のHRクラスで担任の先生の代わりに朝礼をしたとき。話すべきことは連絡と用意してきたちょっとしたお話の2つだと分かっているはずなのに、いざ教壇に立ってみると、疑問が溢れてきた。

第一声はなんて発したらいいんだろう。
連絡から小話にうつるときはどんな言葉で繋いだらいいんだろう。
朝礼を終わるときはどうやってしめたらいいんだろう。

ただ「はい、じゃあ終わります」と朝礼をしめた時は、クラスの担任の先生から「今日も1日頑張ろうね」とか生徒に寄り添える一言があるともっと良い、というアドバイスをいただいた。

一度朝礼をしめる声のトーンが低くなってしまったときがあった。そのとき、あ、今教室の雰囲気が少し暗くなったな、と自分で思った。

 

実習前半の多くの時間は授業観察をした。
『授業観察』って言葉は最初違和感があったけど、学校からの文章にもある言葉。
『見学』じゃなくて『観察』。

生徒だった時、飽きを感じたり余計なことを考えたりする隙間がないせいか、自然に集中できている人が多かったなぁと思っていた授業。学ぶ内容や学び方(声に出して歌う、問題の解説を聞く、隣の人と話し合う)は、長くても人間の集中力がもつ15分ごとに変わる。授業中に何気なく当てられたと思っていた質問は、オープンクエスチョンなのかクローズドクエスチョンなのか、全体へ問うのか個人を指名するのか、全て計算されたものだった。
担当の先生は、一秒の間が命取り。生徒は褒められたときのことってよく覚えているから、少し大げさに、しっかり褒めてよくできていることを伝える。と話していた。
授業中に違和感を感じた子や、選択授業が増えて授業が重ならない子に対しては、休み時間や掃除の時間に声をかけたり、職員室で他の先生に聞いたりするそう。廊下で何気なく話しかけられて生まれたと思っていた会話は、先生に考えがあって生まれた会話だったのかもしれない。

 

その他、色々な先生の授業、振る舞いを観察した。
一動作、一言、一秒、一音で、その場の空気が変わることに気がついた。

そしてそれらは偶然のものではなく、場を作るために先生が考えて生まれたものだった。最初は一つ一つ意識していたものが習慣になり、無意識に振る舞えるようになる。先生方にとってはもう習慣で当たり前のものなのだ。

 

今までの自分の中で、意識から無意識になった行動ってなんだろうと考えた時、学生カバンの持ち方のことを思い出した。電車通学が始まった頃、右と左、どっちでカバンを持つか悩んでいた。色々と考えた結果私は改札でタッチするところが右側にあるので、右手で定期を取り出しやすいように、左肩でカバンを持つことにした。でも友達にそれを話したら、その子は右手で定期を取りやすいように、右肩でカバンを持つようにしていた。

目的は同じ「タッチしやすいようにカバンを持つこと」なのに、持ち方は違った。

 

先生が言っていたことの中で、印象に残っていることがある。
それは、「授業中が生徒と1番深く関われる」という言葉。

意外だと思った。
休み時間や掃除の時間に一緒に話したり、友達と過ごしている姿を見たりする方が、深く知れると思っていた。

しかし、授業中だからこそ、その子の普段見えない部分に触れられることに気がついた。
休み時間や朝終礼などの自由な時間と異なり、授業中は同じ時間に同じ席に座り同じことを学んでいるという状況になる。そんな状況下だからこそ、各々が何を考え、どんな表情をして、どんな反応をするのか。という部分が見える。

そう、先生はよく見ている。

 

教師の立場から見れば、小さな行動でその場を変えることができる。
生徒の立場から見れば、小さな行動から自分を読み取られてしまう。

なんとなくマザーテレサの言葉を思い出した。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。

言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。

行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。

習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。

性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。 

 

今回の教育実習から帰って来たあと、色々な人に実習であったことを話した。
その中でも同じところで同じ反応をされることが何度もあった。

「生徒はみんな自分が育てた子供のように可愛く、実習生同士でもそれぞれの生徒の話を自慢するようによくしていました。」

この私の感想に対して、多くの人から「良い経験をしたんだね」と言われた。本当にその通りでいま自分で振り返っても忙しく、幸せな経験である。このポイントでそれが伝わりやすいみたい。

実際に実習を終えるまでは、教育実習というものがこんなにも普段と違う環境の中で、違う立場に立ち、違う時間の流れの中の生活することだということに気がつかなかった。今まで触れたことのなかった生活に触れることができたのは、本当に貴重な体験になった。

もうお世話になった先生方には感謝しかない。他の実習生の友達はどんな経験をしてるんだろう。また文化祭でクラスの子達に会えるのが楽しみだな。

はい。また待ち遠しいことが増えた。